宇和島というまちには、さまざまな魅力がある。
その一つは、幕末の歴史である。黒船の襲来により、右往左往する幕府に対して幕政改革を進言し、国事に関わっていった宇和島藩主・伊達宗城(だてむねなり)は、四国の中藩ながら、蘭癖といわれるほど海外の進歩的なものに関心が強く、優れた蘭学者たちを召し抱えて、西洋の科学文明を取り入れていった。
本誌では、もともと父の影響で進歩的だった宗城の出自をはじめ、親戚となった佐賀藩の鍋島直正から影響を受けたことにも言及。浦賀へ藩士を派遣し、書き取らせた「ヘルリとアータムス」と書かれた異人の肖像画や、帆船の絵など、近年発見された興味深い新たな資料も掲載している。
宇和島の魅力は、歴史上の人物として有名な、さまざまな人物が出た点にもある。学者、ジャーナリスト、実業家、芸術家、文学者など、宇和島出身の人物とともに、司馬遼太郎、獅子文六、冨沢赤黄男(とみざわかきお)など宇和島ゆかりの作家たちも紹介し、彼らが感じた宇和島の魅力を浮かび上がらせている。
宇和島の面白いところは、リアス式海岸からなる複雑な地形と、そこで生きてきた人々の生活の知恵が、魚類養殖・真珠養殖といった産業や、段々畑といった独特の民俗となって息づいているところである。そういう意味で、唯一残された遊子水荷浦(ゆす みずがうら)の段々畑は、宇和島のシンボルである宇和島城と並ぶ、“もう一つの象徴”ともいうべきものである。
このほか、宇和島出身のベストセラー作家・片山恭一氏や、宇和島東高を卒業した前早稲田大学総長の奥島孝康氏なども懐かしい故郷へエッセイを寄せている。
祭り、郷土料理、伝統工芸、方言など、さまざまな宇和島がギュッと詰まった、宇和島大好き人間、宇和島出身者にはお勧めの一冊である。
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