第2章 加工技術ノウハウ継承データベース

2−1旋盤
2−1−1 旋盤のあらまし

 旋盤(lathe)とは、工作物に回転をあたえ、おもにバイトによって外丸削り、中ぐり、突切り、正面削り、ねじ切りなどの加工をする工作機械である。
2−1−2 旋盤の構造

(1) ベッドおよび脚
ベッドは主軸台、往復台、心押し台を載せるもので、切削加工によるねじれと回転モーメントに充分耐えうる頑強な構造になっていなければならない。
 ベッド案内面の形状には、アメリカ式と呼ばれる山形案内面とイギリス方と呼ばれる平形案内面とがあり、それぞれ長所・短所がある。

(2) 主軸台
ベッド案内面の左端に位置し、中央部に主軸を備え、その中に軸の駆動装置、速度変換装置および往復台の送り伝導装置をいれている部分が主軸台である。
主軸の駆動方式としては、段車式と全歯車式とがある。全歯車式はここの旋盤に電動機を取り付ける場合に用いられる方式である。高速回転ができて、速度変換も可能であり、生産能率が高いという長所がる。

(3) 送り歯機構
送り歯機構は、主軸から回転を受け、所要の速度に変えて送り軸あるいは親ねじを回転させ、往復台に送り運動を与える機構である。

(4) 心押し台
心押し台は、主軸台とは反対側のベッドに位置し、スピンドルに対して取り付けたセンタにより、費切削材の一端を支持して旋削をおこなう。また、スピンドルにセンタのかわりにドリルやリーマを差し込み、穴あけ加工、リーマ加工を行うこともできる。

(5)往復台
往復台は主軸台と心押し台との間のベッド上におかれ、バイトに縦方向、横方向の送りを与えるための装置である。サドルの前面にたれているのがエプロンで、その中に縦および横方向におくり、送り方向の変換、自動送りの掛け外し、ねじ切りなどの装置が内蔵されている。

2−1−3 旋盤の種類

旋盤には、作業の目的によって、つぎのような種類のものがある。

1.  普通旋盤(Engine lathe)
2.  卓上旋盤(Bench lathe)
3.  ならい旋盤(Copying lathe)
4.  多刃旋盤(Multicut lathe)
5.  工具旋盤(Tool room lathe)
6.  二番取り旋盤(Relieving lathe)
7.  正面旋盤(Face lathe)
8.  タレット旋盤(Turret lathe)
9.  卓上タレット旋盤(Bench turret lathe)
10.  自動旋盤(Automatic lathe)
11.  立て旋盤(Vertical boring and turning mill、Vertical lathe)
12.  立てタレット旋盤(Vertical turret lathe)
13.  車輪旋盤(Wheel lathe)
14.  車軸旋盤(Axle lathe)
15.  クランク軸旋盤(Crank shaft lathe)
16.  クランク ピン旋盤(Crank pin lathe)
17.  カム軸旋盤(Cam shaft lathe)
18.  ねじ切り旋盤(Theread chasing lathe、Screw cutting lathe)
19.  親ねじ旋盤(Lead screw chasing lathe)
20.  ロール旋盤(Roll lathe)
21. 数値制御(NC)旋盤
22. その他各種専用機

2−1−4 各種旋盤の特徴

1.普通旋盤


 旋盤のなかでもっとも一般的なもので、単に旋盤といえば普通旋盤をさす。2・2図は普通旋盤を示したものである。
 普通旋盤は、多品種少量生産工場、試作工場、ジグ工具工場、修理工場などにおいてよく使用されるほかに、旋削の基本作業を習得する実習工場にも適する。精密旋盤、高速旋盤、強力旋盤などはみな普通旋盤の性能を強調するためのよびかたで、これらのはっきりした基準はない。

2.卓上旋盤


 計器、時計などの部品のように小さな工作物を加工するために、とくに小形につくられた旋盤で、作業台上に据え付けて使用する。

3.ならい旋盤

型板や模型にならって、刃物台が自動的に切込んでゆき、送り運動を行なって工作物に型板と相似の輪かくを削りだす作業をする旋盤である。このような加工を、ならい削り(copying)という。

4.多刃旋盤

段付きの多い工作物や、削りしろの多い工作物は、1本のバイトで何回も削るのでは能率が悪いので、数本のバイトを刃物台に取り付け、各バイトが同時に切削をして能率を高めた旋盤である。このように、二つ以上の工具で削ることを多刃削り(multi-tool cutting)という。

5.工具旋盤

おもに刃物やその他の工具の加工に使用する旋盤で、全体のしくみは普通旋盤も同じであるが、テ−パ削り装置、二番取り装置をもち、ねじ切りのピッチ範囲がひろく、各部の精度は普通旋盤より高いこと、などが特徴である。二番取りを専門に行なう旋盤を、二番取り旋盤という。

6.正面旋盤

径が大きく、長さの短い工作物の面削りをおもな目的とする旋盤である。
正面旋盤は、主軸台、ベース プレート、クロス ベッド、刃物台などからなっている。ベース プレート(base plate)は、床の上にあってクロス ベッド(cross bed)をささえている。刃物台はクロス ベッドによって案内され、主軸の直角方向に広い範囲にわたって移動できる。刃物台の移動につれて、主軸の回転速度が自動的に無段変速し、切削速度を一定に保つものがある。工作物を主軸に取り付けるとき、作業がやりにくく、異形の工作物では重量不釣合いが工作精度に悪い影響をあたえやすい。
正面盤ともいわれ、上方から見た形がT字形をしているところからティー レース(T lathe)ともいわれる。

7.タレット旋盤

数行程を要する加工に必要な各種の工具を、旋回割出しのできる刃物台に順次に取り付け、この刃物台が1回転するあいだに加工が終わるようにした旋盤をタレット旋盤という。タレット旋盤は、一般に同一部品の中量生産に適するが、自動サイクルのできるものや、全操作が自動的にできる自動タレット旋盤は多量生産にも使用されている。

8.卓上タレット旋盤

作業台上などに据え付けて使用する小形のタレット旋盤である。操作は手動によって行なわれるものが多い。

9.自動旋盤

旋盤作業の操作を自動的に行なうものを自動旋盤という。

(1)棒材作業用単軸自動旋盤 長い棒状の素材を、主軸台のうしろから主軸中を通して供給し、これから同一の製品をつぎつぎに加工しては切り落とし、素材がなくなると機械は自動的に停止する形式の自動旋盤で、各部の作動はカムによって行なわれる。

(2)棒材作業用多軸自動旋盤 ふつう、4〜6本の主軸を、一つの主軸ドラム(spindle drum、spindle carrier)に集め、主軸ドラムを旋回割出しして、その1回転するあいだに加工が終わるものである。一個の加工時間が短いので、ベアリング製造などの多量生産に適する。

(3)チャック作業用単軸自動旋盤 刃物台の形式により、1.  タレット形、2.  多刃形とがある。
 これらは、小形のものはカムなどの機械式、中、大形のものは油圧で作動する。チャッキングマシンなどともよばれ、単能形旋盤はこの形式をとるものが多い。

(4)チャック作業用多軸自動旋盤 棒材作業用多軸自動旋盤と同じしくみで、主軸端に工作物を取り付けるチャックをもつ点が違う。刃物台は、主軸の数より1個少ないのがふつうで、刃物台のない位置で主軸に工作物の供給、取出しをする。工作物は、マガジン装置によって自動的に供給される。
 主軸の向きによって、1.  立て形、2.  横形とがある。

(5)センタ作業用自動旋盤 普通旋盤の作業を自動化したものと考えてよく、切りくずの処理をしやすくするために、ベッドのすべり面を傾斜させたり、ベッドを工作物の上にしたものがある。数値制御(NC)旋盤は、この形式をとっているものが多い。

10.立て旋盤、立てタレット旋盤

テーブルの旋回中心が立て形(垂直)である旋盤を立て旋盤という。工作物の取付けが容易で、大形工作物、不釣合いな工作物などの加工に適する。
立て旋盤は、外形によって

1.  門形(double housing type)
2.  シングル コラム形(single column type)
がある。立て旋盤は、つぎのような部分からなる。
1.  コラム…横けたを水平に支持する。
2.  横けた…正面刃物台を水平方向に案内する。
3.  トップ ビーム…門形において、両側のコラムの上部をつなぐ。
4.  正面刃物台…横けたに取り付けられる刃物台。
5.  横刃物台…コラムに取り付けられ、上下運動する刃物台。
6.  ベッド…機械の基礎となるもので、テーブルをささえ、コラム、主歯車箱などが取り付けられる。
7.  テーブル…工作物をのせて回転する。
立て旋盤は、工作物の直径に応じて振りを変えられるものと、変えられないものとがある。
1.  振り固定形
2.  振り可変形 コラム移動形(extension type)
        テーブル移動方(displaceable table type)

正面刃物台は、刃物棒、刃物棒受け、サドルなどからなる。横刃物台をもたないものもある。

正面刃物台にタレット ヘッドをそなえた立て旋盤を、立てタレット旋盤という。工作物の形状や数量に応じて刃物台だけ交換し、立て旋盤にも立てタレット旋盤にもなるものや、刃物棒とタレットの両方をそなえたものが多い。

2−1−5 旋盤用工具

旋盤作業では、つぎのような工具が使用される。

1.バイト
 シャンク(柄)の一端に切れ刃をもつ刃物をバイト(single point tool)といい、つぎのようなものがある。
 刃部の材質によって

 1.  炭素工具鋼バイト(carbon steel bit)
 2.  合金工具鋼バイト(alloy steel bit)
 3.  高速度鋼バイト(high speed steel bit)
 4.  超硬バイト(cemented carbide bit)
 5.  サーメット バイト(cermet bit)
 6.  セラミック バイト(ceramic bit)
 7.  ダイヤモンド バイト(diamond bit)

がある。なかでも高速度鋼バイトと超硬バイトがもっとも多く使用されている。

バイトの構造によっては、つぎのようなものがある。

1.  むくバイト(solid tool)
2.  溶接バイト(butt welded tool)
3.  付け刃バイト(tipped tool)
4.  クランプ バイト(clamped tool)
5.  差込みバイト(bit tool)

むくバイトのうち、熱処理ずみのバイト材料で、使用するとき刃部を研削などによって形づくって用いるものを完成バイトという。

バイトの形状によって、分けるとつぎのようなものあがる。

1.  剣バイト(staright tool)
2.  曲がりバイト(bent tool)
3.  片刃バイト(knife tool)
4.  腰折れバイト(goose necked tool)
5.  サーキュラ バイト(circular tool)
6.  丸こまバイト(button tool)
7.  傾斜切れ刃バイト(oblique edged tool)
8.  回転バイト(rotary tool)
9.  タンゼンシャル バイト(tangential tool)
10.  ヘール バイト(spring tool) 

用途によって分けると、つぎのようなものがある。

1.  荒削りバイト(roughing tool)
2.  仕上げバイト(finishing tool)
3.  突切りバイト(parting tool)
4.  ねじ切りバイト(threading tool)
5.  端面バイト(facing tool)
6.  中ぐりバイト(boring bar tool)
7.  穴ぐりバイト(boring tool)
8.  みぞ切りバイト(grooving tool)
9.  総形バイト(forming tool)
10.  スロッティング バイト(slotting tool)
11.  ならいバイト(copying tool)
12.  ローラ ターナ バイト(roller turner tool)